FEATURE
D1 CD / SACDプレーヤー/トランスポートは、CH Precisionの最初の製品であり、10年以上の間、C1 D/Aコントローラーとともに、高解像度ディスク再生のスタンダードを担ってきましたが、最近では多くのリスナーの焦点がファイル再生に切り替わってしまいました。
それでも、新しい製造技術、材料、さらにはフォーマットの絶え間ない開発により、光ディスクのサウンドはかつてないほど充実しています。Glass CD、SHMディスク、UHQCD、およびMQAエンコーディングなどの新しいフォーマットの出現により、パフォーマンスが向上し、ディスクの再生に新たな関連性がもたらされています。つまり、既存の何百万ものディスクが依然として優れたパフォーマンスを提供し続けているのです。 しかし同時に、再生ハードウェアの品質が大幅に低下し、これらの進歩が損なわれ、光ディスクの真の価値が隠されてしまっています。多くのCDプレーヤーが、多入力DACにおまけのように取り付けられた既製のトランスポートに過ぎない現在、光ディスク再生の評価は大きく下がっていることは疑いようのない事実であり、多くの人が日用品のようにそれ以上お金を払うのは意味がないと考えています。しかしここではそうはいきません。なぜならD1.5は日用品などではなく、CD/SACD/MQACDからデータを完璧に読み取り、出力するためにすべての技術が注ぎ込まれた、非常に高度なトランスポート/プレイヤーだからです。
ディスクプレーヤーの心臓部は、トランスポート・メカニズムそのものです。比較的シンプルな機器ですが、D1.5のような高度な機器ではデータストリームがD/A変換の直前までできる限り純粋に完璧にデータを送り出すことを目指すことが重要で、そのためには振動と電子的ノイズを徹底的に対応させる必要があります。CDはミッドレンジで200~500rpmで回転し(回転周波数はディスクが読み取られている部分によって変わる)、SACDの場合はそれよりも速く回転します。ディスクの偏心はこの回転周波数で振動の原因になります。
D1.5を開発するにあたって、完全にオプティカルユニットを見直しました。D1では別のメーカーの高品質ドライブを使ってオプティカルユニットを非常に薄いスチール板と高剛性ダンパーに取り付けられていましたが、上記のミッドレンジでの回転周波数時のこのブロックの共鳴周波数は300~800Hzで、これは望ましくない周波数帯です。そこでオプティカルピックアップとモーターを真鍮製の”スレッド”に取り付け、さらにアルファゲルのダンパーがメカシャーシと"スレッド"を絶縁することで、AC電源の周波数帯域まで振動をシャットアウト。全体の質量が1.5kgという重量になり、質量に反比例する共鳴周波数を25Hzまで低下させています。これにより、ディスクの回転によって発生する振動が繊細な電子基板に伝わることを防ぎ、また、電源や筐体から発生する低周波振動がレーザーメカニズムの正確なトラッキングを妨げることもありません。
さらに、ディスククランプには軽量なPEEK樹脂を採用し、グリップ力と安定性を確保することで、ダイレクトドライブモーターからディスクへのスリップフリーを実現しています。
この重要なトランスポート・メカニズム「MORSe」を支えるシャーシは、2kgの高剛性アルミ構造で、D1.5の重いボトムプレートに直接結合されています。これにより、回転部の理想的なメカニカルグラウディングとなり、筐体のメカニカルグラウンドシステムと合わせて機械的な干渉を効果的に排除しています。
D1.5のデジタル処理は、CH Precisionが正しいデジタルオーディオ、またはオーディオ再生全般で重要だと認識している原理に基づいて開発されています。その一つはフィルターの”タイム汚染”を抑えること。つまりサンプルがフィルターを通過する時に発生させる時間のばらつきを抑制することです。デジタル変換での従来のアプローチには時間のずれがあります。これは使われているサンプリングにカーネル法が使用されるためで、オーディオをA/Dの中のサンプルに分割し、その後D/Aで再度連続したものに一体化するためのメカニカルな機能が必要以上に長くタイム領域に存在するために時間がかかってしまうのです。この問題を解決するため、D1.5では「C1」で開発された優れたテクノロジーであるCH Precision独自のPEtERスプラインデジタルフィルターアルゴリズムを実装しています。”タイム汚染”は基本的にシステムに一つのパルスを通した場合、インパルス特性の長いフィルターだと、その一つのサンプルが多数のサンプルにまで広がってしまいます。それに比べてスプラインはずっとコンパクトなサポートとなり、そのためサンプルが入って出てくる時間は、PEtERスプラインフィルターの場合、わずか100μs以下です。
D1.5はコンフィギュレーション可能なCD/SACDプレイヤーまたはトランスポートであり、インプットモジュール方式を採用することで、必要に応じて出力トポロジーをさいてきかすることができます。 すべてのD1.5には、デジタル出力HDボード(CH LINK HD, S/PDIF, AES/EBU, Toslink)が標準装備されています。専用のCH LINK HD接続では、DSDを含む高解像度データをC1.2にダイレクトに出力が可能。またMQACD再生の場合、ユーザーは生のMQA(44.1kHz/16bit)出力がMQB(88.2kHz/24bit)出力のどちらかを選択することができます。オプションのアナログモノラル出力ボードを取り付ければ、SACD, CDおよびMQACDの再生が可能な一体型プレイヤーとして楽しむことができます。また、クロックインターフェイスボードを取り付ければ、D1.5をC1.2のようなDACのマスタークロックまたはT1のようなマスタークロックジェネレーターのいずれかにスレーブして最適なパフォーマンスを実現できます。
すべての再生、出力、ユーザーインターフェース機能は、フロントパネルにあるおなじみのCHコンセントリックコントロール、またはCH Control Appを介してリモートでアクセスできます。大型のAMOLEDスクリーンは、異なるそれぞれのソース/出力フォーマットを反映したカラー設定が可能で、システム内の他のユニットと完璧にマッチするように色自体や明るさを調整することができます。
D1.5は、このような柔軟な構成と操作性により、最高のパフォーマンスを発揮するだけでなく、最も適応性が高く、長きにわたり将来性のある光ディスク再生ソリューションとなっています。